動画解説: 武田実里 先生
初回:1~12小節目まで
今回のポイント: 旋律の歌わせ方について
楽曲分析: 石黒秀(音楽教室シンフォニア)
フランツ・リストの最も人気のあるピアノ曲の一つです。美しい旋律と和声、適度に難易度が高く演奏映えするカデンツァなど、演奏会用の楽曲としても好まれています。今回は1ページ目の分析になります。
内声の旋律に関して適度な非和声音があるため、このあたり意識して演奏するのが良いかと思います。例えば3小節目のレの音(倚音)、5小節目のソ(経過音)・ド(倚音)など。4小節目のドはシb(根音)に解決しておらず、9度の音が独立して使用されています。このあたりは印象派の時代の片鱗が見られます。
分析が少し難しい箇所としては、5小節目の最初はコードネームをきちんと書くとDb/Eb – Cm/Eb – Db/Ebとなりますが、真ん中の和音は偶成和音ですので、全体としてはVと考えて、一応DbMaj7/Ebと記載しました。全部の音を拾ってEb69(この場合ラbは非和声音でここだけsus4)とも書けます。ここに対応する二回目の11小節目ですが、上の音が若干変わっています。右手がV7の構成音に変化しているため、Eb9 – Eb7と記載しました。旋律のファ – ソ – ラb – ド – シbの、ラb – ドの音は、シbに向かう二重倚音と考えても良いと思います。このあたりは厳密に分析しなくても、11小節目は全部ドミナント(部分的に音が転移している)で、その中で旋律が動いているという捉え方で良いです。
Aからすぐに並行調のFmに進むと見せかけ、ドッペルドミナントBb9に向かうV7として、FmではなくF7を使用しています。ここで初めて非和声音の倚音が出てきます。このあたりも旋律の作り方としてうまいですよね。現代の軽音楽曲ではよく使われています。動画でも解説されていますが、同じ旋律を繰り返すだけだと飽きてしまうので、繰り返しの部分で少し和声的な変化を加えつつ旋律も変えています。このあたりを意識して弾いてみてください。