さくら横ちょう
作詞:加藤周一作曲:中田喜直
この詩は、加藤周一の淡い初恋の想いが詠まれており、憧れの女性の姿を爛漫と咲く桜に重ねて描いています。過ぎ去った恋が、満開の桜の風景を見ることでよみがえる――そんな恋の追憶を綴った曲です。
⭐︎《さくら横ちょう》ワンポイントアドバイス
1. 冒頭「春の宵 さくらが咲くと 花ばかり さくら横ちょう」
•明るさではなく柔らかい夕暮れの光を意識。声は透明感を保ち、少し息を含ませる。
•「花ばかり」は静けさを感じさせるように、明度を抑えて穏やかに。
•フレーズのブレスは、自然な語り口と一致させる。
2. 回想の部分「想い出す 恋の昨日 君はもうここにいないと」
•過去への回想を声の陰影で表現し、直接的な感情表現より響きの色で切なさを描く。
•語尾は軽く落とし、余韻を残す。
3. 記憶の美しさ「ああ いつも 花の女王 ほほえんだ 夢のふるさと」
•心の中の美しい記憶として、微かな微笑みを含む柔らかい響きで。
•ピアノと声を溶け込ませ、情景の一部として聴かせる。
4. 諦念と現実の受容「会い見るの時は なかろう 『その後どう』『しばらくねえ』と 言ったって はじまらないと 心得て 花でも見よう」
•過ぎ去った恋や別れの諦めが現れる箇所。
•「会い見るの時は なかろう」は少し抑えた声で、落ち着いた語り口に。
•「花でも見よう」は、前向きな諦めを表す。
5. 終結部「春の宵 さくらが咲くと 花ばかり さくら横ちょう」
•冒頭のフレーズの回帰だが、今度は「思い出の風景」として少し翳りを持たせる。
•最後は余韻を残し静かに終えることで、時間の経過と想いの深さを伝える。
⭐︎ 演奏全体のポイント
•声の明度・陰影で情景と感情を自然に描き、フレーズの呼吸は日本語の語り口に沿わせるようにし、ピアノとの響きを一体化させる。透明な空気感を大切に演奏してみてください。
声楽講師 近野 桂介






